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きらきらと朝日に照らされて、神谷道場の門前に、水滴が光る。
自分が水を撒いた部分が、だんだんと地面に黒く広がっていく。
地面が潤う、その様を見て微笑みながら、薫はまたせっせと手元の柄杓を動かした。
「変わろうか?」
「きゃっ!」
いきなり後ろから抱きすくめられ、思わず後ろを振り向こうとするが、耳元にかかる彼の声に身体が硬直してしまった。
「け、けんしん・・・」
やっと出た言葉はカタコトで、とてもぎこちない。
-いつの間に?!・・・-と言うつもりが、胸のドキドキに邪魔されて、言葉が出てこない。そんな薫とは対照的に、薫の反応を楽しむかのように、剣心はますますぎゅっと抱き込む腕に力を入れる。
「おろ?薫殿、耳が真っ赤でござるが、熱でもあるのでござるか?」
「んもー、そんなんじゃっ!ちょっ、そ、それよりっ!もー、離してっ!」
「おろ?なぜ?」
薫は剣心の腕から逃れようと、もぞもぞと身体を動かすが、彼の腕の力が和らぐことはない。
「な、なぜって・・・。こ、ここ、門の前なのに。こ・・・こんな所で・・・」
しどろもどろに言葉を繋ぐ薫の首筋に、剣心は顔をうめると、ほっと息を吐く。
「って、ちょっと剣心!聞いてるの?!誰かに見られたらどうするの?!」
「別に構わぬよ。」
しらっと平気な様子の剣心は、今度は首を伸ばして薫の頬に口付ける。薫の顔はますます真っ赤になり、ますます慌てる。
「んもー!離して~~」
「いや。」
後ろから抱きしめられているため、剣心の表情は分からないが、きっと自分の反応をからかう気持ちで楽しんでいるに違いない。
さらりと余裕で交わされたその言葉に、薫は真っ赤な顔でむっとする。生来の負けず嫌いの性格から、ばっと持っていた柄杓で桶から水を汲むと反撃に出る。
「んも~、これならどう?!」
ばしゃっと水飛沫が飛び散る。薫が手に持った柄杓の水を、後ろの剣心へめがけて投げつけたのだ。
「おっと。」
さすがは元人斬り。一瞬のその反応の速さは速かったものの、肩や袖の部分に少し水が飛び散ったようだった。
そして、その腕に捕らえていたはずの恋人も逃してしまった。
「やったでござるな」
剣心がそう言うが早いか、薫は笑い声を上げながら、既に庭の方へと走り出していた。
その薫を、剣心も笑いながら追いかける。
どこからか、法師蝉の鳴き声が朝日と共に聴こえ始めていた。
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あとがき。
「やったでござるな」を剣心に言わせてみたかったww
おいおい、締めが追い掛けっこって・・・。おいおい、おいよ~~。ww
ってか追い掛けっこって・・・まさにバカップルww
でも追い掛けっこってイイですね~ww
この話の続きが、実は今いろいろ考えていて、もしかしたら続編として出すかもしれません。
お題か、単なるショートにするかはまだ決めていないのですが、続編は書きたいなぁと思っています