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ここは「るろうに剣心」二次創作小説サイトです。 詳しくはAboutよりどうぞ。
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窓から見える月は、満月だった。

剣心は軽くため息をついた。自分のすぐ傍らでは、ほろ酔い気分で芸者と戯れる者達。
あちら側では、この宴会を催した山県が、重役の者達と何やら真剣な顔つきで向き合っている。

山県に誘われたこの宴会。つい先日強盗を捕まえた剣心に、その手柄のお礼と、挨拶にと、山県から声が掛かった。昨日は山県と他数名の重役だけの小さな宴会だったが、今日は浦村署長をはじめ、人数が多い。


こうしてここに座って、もう何時間も経つようにさえ思う。

 -薫殿は、もう寝てしまっているだろうか・・・-

気づけば、考えるのは家に残してきた妻の事ばかり。

彼女は今何をしているんだろう。もう風呂に入った頃だろうか。1人で寂しい思いはしていないだろうか。
彼女もこの同じ満月を見上げているのだろうか。

 

  -・・・早く逢いたいー


剣心はもう一度ため息を吐いた。


**************
 


すっかり陽も暮れ。
夕焼け空に、一番星が光って見える。それとは反対側の空には、まんまると月が光っている。


神谷道場のすぐ近く、いつもの散歩コースである川原に、薫は腰を掛けていた。
気分転換にと、散歩に出て来たものの、何をする訳でもなく、ただぼんやりとこの川原で時間を持て余していた。
辺りがだんだんと薄暗くなってくるにつれ、家路へと足早に急ぐ人々の姿も点々としてきていた。


「もう、そろそろ、帰ろっかなぁ~・・・」

風がそわそわと草むらを揺らす。その音を聴きながら、ぼんやりと呟いたものの、腰を上げるまでには至らない。

(帰っても、剣心はいないし・・・・。)

  -そう、剣心はいない・・・-

改めてそう自覚すると、なんとも言いようの無い空虚な破片が心に突き刺さっているように感じた。


薫は自分の腹に右手を当ててみる。

  -嬉しい。-

自分と、剣心との子がここにいると初めて聞いた時、一番初めにそう思った。
嬉しい。
本当は嬉しい。
でも、次に出てきた感情は、

  -彼は・・・、剣心はどう思う?-

 


ふと、薫は顔を上げた。
自分の視界に入って来た‘それ’を見た途端、思わず立ち上がった。

       (あれ・・・・?あれは・・・・・-)

 


 

*******************

(すっかり遅くなってしまったでござるなぁ・・・・)

提灯の明かりが、剣心の影を揺らす。その影を見ながら、剣心は先ほどの山県らとの宴会での会話を思い出していた。

『奥方が心配しておられるのだろう。』

薄笑いを浮かべる山県のその言葉に、剣心は照れ笑いをしながら頭を掻いた。そろそろ失礼いたす。と切り出した剣心に、山県がそう返したのである。

『あの剣術小町が奥さんだなんて・・・、羨まし過ぎですよ~~』
『あーあ、僕もあんな美人で可愛い奥さんが欲しいな~~』

山県のからかいを皮切りに、他の者達が次々と口を開く。心なしか、年若い者が異様に口を挟んでくるように感じたが・・・。

 


顔を綻ばせながら、剣心は暗い夜道を真っ直ぐ神谷道場へと足早に向かっていた。

早く、早く彼女に逢いたい。一刻でも、離れていることが惜しい。まず帰ったら、彼女を抱きしめたい。あの美しい黒髪に顔を埋めたい。

今はただそれだけだった。


ふと、剣心の脳裏に、昼過ぎに見送ってくれた彼女の笑顔が蘇る。どことなく弱々しく感じたその笑顔。
そういえば、最近、彼女は少し元気が無いように思う。
いつもの花のような笑顔は、どこか薄く感じて、自分と一緒にいる時でも、どこか一点を見つめてぼーっとしている。食欲も無い。
そのことを問うと、暑いからかも・・・、疲れているんだわ・・・、と曖昧に返されてしまった。

(早く帰ってやらねば・・・)

神谷道場の近くの川原までやって来た。ここを真っ直ぐに行けば、薫の待つ道場はもうすぐそこだ。
剣心の足が、また一つ速くなろうとした時、前方に人影が見えた。

こんな夜更けに、提灯の明かりも無しで。
と不信に思った矢先、思わず立ち止まった。
長い黒髪が風に揺れている。それは、どこかで見た人物を象っている。

一歩一歩、ゆっくり歩みよると、それはだんだんと確信となる。

自分が今想い焦がれて止まない人・・・。


「かおるどの・・・?」


その人物はすぐ振り向いた。


「剣心・・・?」

暗闇の中、どこか伺うように発せられた彼女の声よりも、剣心の声の方が大きかった。

「こんな所でっ、どうしたのでござるか?!何かあったのでござるかっ?!」

驚いた顔で近づいて来た剣心に、薫は「ううん。」と柔らかい笑顔で首を振った。その笑顔に剣心は少し安堵したものの、彼女が何故こんな所にいるのか腑に落ちない。何かあったのではと、心配そうに薫の手を握る。

「遅くなってすまなかった。大丈夫でござるか?どこか具合でも・・・?あ、もしや、ここで待っていてくれたのでは・・・?!」

わたわたと喋るその口ぶりから、よほど剣心が慌てていることが分かる。最初は目を丸くしていた薫も、珍しいそんな彼にクスリと笑う。

「ううん。ねぇ、見て」

薫は静かにそう言うと、剣心から視線を外し、川の方を見つめる。薫のその視線を追う剣心も、何が何だかさっぱりだったが、次第にその目に映るものが確かになってくる。


「蛍・・・、で、ござるか。」


自ら発したその言葉に、いつかの光景を思い出す。

そういえば、ここは彼女に別れを告げたところ。

そういえば、ここは彼女が涙を流したところ。

今となっては、懐かしい、思い出。


飛び交う柔らかい光を眺めながら、考えていると、彼女が突然口を開いた。

「私もね。思い出すの。蛍を見ると、あの時の事・・・。」

その言葉に、少し驚いて彼女を見る。まるで今、剣心が考えていた事を、薫も同じように考えていたようだ。しかし、彼女の今の顔はとても穏やかで。

「あの時ね、あなたが去って行ってしまって、その後、私、ずっとここで泣いてたの。」

ふふと、笑いながら蛍を見つめる薫に、剣心はどう声を掛けたらいいのか戸惑う。

「でもね、一人ぼっちじゃなかった。いつも見守っていてくれてたのね。」

      -そう、今だって。


                今なら。  今なら言える。 大丈夫。

                            見守ってくれてるから。 だから大丈夫。

                                 きっと、 きっと・・・・・-

「剣心、」

改めて自分の方へと向き直った薫の目は少し潤んでいて。そんな彼女を見つめるのは耐えられなくて、握っていた手をそのまま薫の頬に伸ばそうとした。

「赤ちゃん・・・、できたの。」

彼女のその言葉にその手は止まった。

「え・・・・?」

「三ヶ月、だって・・・、あの・・・あのっね、ごめんなさ・・い。」

自分を見つめるその藍色の瞳から、ぽろぽろと涙が零れる。だんだんと嗚咽する薫の言葉を剣心は黙ったまま聞く。

「い・・・言えなくって・・・、怖くて。怖くって。お、遅くなって・・・しま、って、ご、ごめんな・・・・」

薫の言葉は剣心の緋色の肩口へと消えた。いきなり抱きしめられて驚いた薫は、言葉に詰まる。

「良かった・・・・」

小さく、でも確かに耳元に聞こえる剣心の声は、とても温かなものだった。

「てっきり拙者・・・、どこか具合が悪いのかと・・・。最近元気が無い故、何かあったのではと・・・」

今まで留めていたあらゆる想いがいっきに口から出るような、言葉は繋がっていないけど、でも、薫には彼が言いたいことが十分理解できた。

「良かった・・・。薫・・・・」

彼の腕がますます強く薫を抱きしめた。
薫の涙はすっかり引っ込んでいた。ひらひらと舞う蛍に、薫はゆっくり微笑む。そしてそのまま彼の肩口に顔を埋めた。

あの時と同じだけど、同じじゃない。抱き合う二人に、淡い光が囁いた。

いつまでも味方だよ、と。


____________________
あとがき。

いろいろ場面が飛び飛びしちゃって、「**」でごまかしたりとかしちゃって(えええそうなの笑)・・・。分かりにくかったかもしれませんが う~ん いかがでしたでしょうか。

薫ちゃん、あんなに悩んでたのに、蛍を見て勇気を貰って、やっと伝えれたってのも、
もうちょっとこう、その勇気の過程とか描けたら良かったなあと。もっと文才があったらなぁ・・・としみじみ。 何だか無理やりすぎでしたね 
くそォ。(笑)
にしても、初・前編、後編と分けた小説でした。
この調子で長編もォ    といきたいところですねっ   ですねっ(なんだ、この異様な押しはっ笑)

ところで・・・。今読み返して、「あっ・・・、剣心の手に持ってた提灯どこいったん?!」とか思ってしまいました。発見してしまいました。(汗)そこはぁ、まあ、大目にィ。きゃ~~~~それ以上突っ込まないで~~~(意味不明)(笑)
 

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