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「ひ~~むらっ」
「おろ?操殿」
名を呼ばれて、洗濯物を干していた手を止め縁側の方を振り返った。
そこには、何やら大きな箱のような物を手にした操の姿があった。
「ねねっ!これ見て~♪」
操が箱を大きく上に掲げた。
「囲碁・・・?でござるか?」
「当ったり~♪薫さんが蔵から見つけ出してくれたんだ。」
にこにこと、怪しい笑みを浮かべながら、操はよいしょっ、と、碁盤を縁側へ置くと、さささっと、座布団を二枚定位置へと敷く。
「さぁ~っ緋村!これで勝負よ!」
「おろ?!勝負・・・?でござるか?!」
大きく握りこぶしを作る操は、既にやる気満々、準備満タンと言ったところだ。当然と言う様に、自分の向かい側の座布団を指差す。
「ほらっ!早く座って!勝負よ!」
「はぁー。」
いきなり過ぎてよく分からないと言った表情をしながらも、剣心は言われるまま、腰を掛ける。
干し終えた洗濯物が、風に揺れている。
丁度洗濯物も終わったところであるし、たまには良いかとため息をついた。
「よぉーっし!負けたら勝った方の言う事を何でも聴くって事で、いくわよ!」
「おろ?!み、操殿、それはどういう・・・・」
「あーもーつべこべ言わない!勝ったらいいのよ。ようは、勝ったら!」
操のその言葉は、剣心にではなく、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえるが・・・。
「ふふふー。あたしが勝ったらね~・・・」
またもや怪しげに笑みを作る操に目を合わせまいと、剣心はさっさと碁盤に石を並べる。
「緋村の本心を聞かせてもらうわっ!!」
はっきりと、そして確かに口にした操の言葉に、剣心は「はて?」と首を傾げた。
「だーかーらー、薫さんの事、あんた好きなんでしょ?!」
その「好き」という言葉に、妙にドキリとする。操の見透かしたような、得意げな笑みが剣心を捉える。
途端に、自分の顔がいっきに熱くなってくる事に気づき、戸惑った。脈が変に上がっている気もする。
「ほらほら、どーなのよ!好きって言わないの?あ、もしかしてもう言った?!緋村が病院に入院中の時は、二人っきりになれる時が多かったしね~」
石を握った手が汗ばむ。
「・・・それは、操殿が勝ってからの話ではござらんか?」
なんとか余裕な素振りでそう返してはみたが、声が裏返っていたことに気づかれたかもしれない。
「あんたさー、ちゃんと好きって伝えないと。気持ちは言葉にしないと伝わらないよ。」
言葉にしないと伝わらない。
操のその言葉が頭の中でエコーする。ぎゅっと持っている石を握り締めた。
そう、伝えなきゃ。
簡単な言葉なのに・・・。
でも、なかなかそれを現実にできない自分がいる。
縁との戦い以来、もどかしいと感じる日々が続いている。
そのうち、そのうちと曖昧に流していた自分の気持ちが、気がつけばこんなところまで流れて来てしまった。
早く伝えなければ。いや、伝えたい。
彼女のあの華のような笑顔を、自分だけのものにしたい。
しかし、伝えようとすればするほど、そのチャンスをものにできない自分がいる。
いったいいつになったら、薫を自分だけのものにすることができるのだろうか・・・。
「特に、女の子ってのは、そういうのはっきり言ってくれないと分からないものなのよー。あたしも蒼紫様の気持ちが・・・って!それは置いといて。」
1人で熱論を並べていた操は、改めて剣心に握りこぶしを見せ付ける。
「とにかくっ!勝負よっ!これであたしが勝ったら、緋村は本心を言う!というか、薫さんに告白するってのはどう?」
「・・・ははは。とにかく、やらねば分からぬよ。」
勢いづく操に、苦笑いで誤魔化しながら剣心は握っていた最後の石を碁盤へと返した。
この後、操が負け続けてしまうなどと、この時はそんな勝敗結果は誰も分からなかった。
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あとがき。
前回で、操ちゃんがポロっと漏らしてしまった「緋村の本心が聞けるかも」の、詳しい内容です。
「気持ちは言葉にしないと伝わらない」
これは「美女か野獣」というドラマからの台詞です。(笑)
大好きなんです。このドラマ。お財布はたいてDVDBOX買いました。
大切に保管してます。そしてたまに観ます。飽きません。
大好き過ぎます。最高過ぎです。(なんだこの日本語ww)
もう、大好きっ
というわけで。悟りが開けない緋村さんです。
「いくつになっても」から思うのは、28の緋村さん。
薫ちゃんは17、18ですからね。28ですよ28(なぜ無意味にそこを押すっ笑)
今回は薫ちゃん本人が出て来て無いこともあって、糖度少なめですね。次はかなり糖度高めな小説が書きたいっ