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隣で眠る彼女は、まだ夢の中だった。

そっと肩を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。




彼女の肩口に顔をうめると、思わず溜め息がでるほどの甘い香りがした。
 


小鳥の囀りと、彼女のスースーという穏やかな寝息と。

しばらく甘い香りに酔いしれていると、彼女が僅かに身を動かす。

「ん・・・・」

「・・・かおるどの?」

そっと顔を上げ、そっと呼びかけて、彼女の顔を覗き込むが、先ほどと対して変化はなく、相変わらずの寝息だった。

こうして彼女の寝顔を眺めるのも、何度目になるだろう。もうその数は数え切れないほどになりつつある。

改めて、彼女は美しいと人だと思う。
白い肌に、長い睫毛。すらりと流れるような黒髪は、さらさらと柔らかい。

その昔、「小野小町」という、それはそれはたいそう美しい歌人がいたというが、その美貌の歌人は彼女のような容姿だったのだろうか。
自分と夫婦になった今でも、『剣術小町』と町中でもて栄やされ、彼女に声を掛けてくる男も多い。
その度に、その者達に釘を刺す己がいることも事実。
しかし、彼等の気持ちも分からないものでもない。分からないものでもないのだが・・・。

ふっと微笑混じりに溜め息をはく。

左手でそっと彼女の頬を撫でる。

「そろそろ、起きてはくれまいか?」

あの華のような、美しい笑顔を早く見せて欲しくて、そっと瞼に口付ける。
願うように。祈るように。

そのまま滑らすように、相変わらずの眠り姫に、そっと口付ける。

温かい、柔らかい彼女の唇に、自分のそれを何度も合わせる。

ちゅっと音と共に、そっと目を明けると、彼女の黒い瞳と目が合った。

「けんしん」

パチパチと何度か瞬きをした彼女は、そっと柔らかく微笑んだ。

「起きていたのでござるか?」

「ふふ。今起きたの。そしたらあなたが・・・、その・・・く・・・、くちづけしてるから。びっくりしちゃって・・・」

はにかみながら頬を染めた彼女は、恥ずかしさからか、身を反らす。
しかし、そんな彼女に御構い無しと、頬に、耳に、追いかけるように口付ける。

「薫殿」

「ふふふ。くすぐったい。」

ぐっと腕に彼女を引き寄せると、彼女の濡れた睫毛が目に入った。
目を瞑ったままのそこに、そっと唇を寄せると、あの独特の味が広がる。

「嬉しくて・・・」

そっと囁いた彼女は、女神のように穏やかな顔だった。

「拙者も。幸せでござる。」

再びぎゅっと抱きしめた。
彼女のぬくもりを逃がさないように。
この幸せを逃がさないように。

 

__________________________
あとがき。

ゲロ甘。(笑)
吐き気がした人はすみませんでした。(笑)

自分でも甘い、甘い、どこまで甘くなるんだそこまでいっちゃうかとか思いながら書いてました。(笑)
でも、私の中では中の中くらいの甘さ加減じゃないかな~とか。今、思う。(笑)たぶんね。

寝込みにちゅーなんてっ、変態だよね。緋村さっん(笑)

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