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「やっと全部干せたでござるな。」
風になびく洗濯物を見ながら、剣心が額をぬぐった。
「ええ。これでスッキリしたわ。」
薫が満面の笑みを向ける。
‘梅雨の中休み’ とは、今日のような天気のことを言うのだろう。小鳥たちの囀りとともに、白い雲が風に乗って行き交う空は青く澄んでいた。
「せっかく天気も良いのだし、買い物にでも行かぬか?」
剣心のその問いに、薫は二つ返事で答えた。
久々の晴間ということもあって、街は買い物客で賑わっていた。親子、恋人同士、子どもたちに、老夫婦。皆、その表情は豊かであり、そして手を繋いで歩くこの夫婦も例外ではなく・・・。
「ねえねえ、お買い物が終わったら、あそこの甘味屋でお団子食べて行かない?」
薫が繋いだ手を揺らしながら、お目当ての甘味屋を指差す。
「いいでござるな。」
剣心がそんな薫を振り返りながら手をひく。
「しかし薫殿・・・・先ほど昼飯を食べたばかりでは・・・」
「あら。甘いものは別腹よ♪」
「薫殿の腹は底なしの樽のようでござるな~」
「あっ!ちょっとそれどういう意味よ~~」
「おろろろ。あはは」
仲睦ましげに手を繋いで歩く姿はさすがは新婚夫婦、とても微笑ましい。そんな二人を知ってか知らずか、澄んでいた青い空は少しずつ雲に覆われていき、魚屋を回り、二人が八百屋を出て来た頃にはすっかり辺りは薄暗くなっていた。
どこからか、あの湿った雨の空気が流れてくるように感じる。
「あんなに晴れていたのに・・・」
薫が空を見上げたと同時に、わずかにポツポツと雨粒が降ってきているのが分かった。さきほどまでは大勢の人々が行き交っていた道も、今は人の数も疎らである。
「一雨きそうでござるな」
剣心が言うか否かザーっという音とともに、大粒の雨が降り出した。
「薫殿!走るでござるよ!」
「あっ、うん!」
半ば強引に薫の腕を引っ張り、剣心は走り出した。ふと視界に入り込んだちょうどいい軒下に、薫を連れて滑り込むように入り込んだ。
「これじゃあ甘味屋さんには行けないわね・・・」
荒い息で肩を上下させながら、薫が残念そうにぼんやりと呟いた。「すぐに止むでござろう」と買った荷物を下へ置きながら、薫に微笑み返した剣心だったが、軒下の屋根から滝のように流れ落ちてくる雨水の勢いに、その自信も打たれつつあった。
「洗濯物、せっかく干したのに・・・これじゃあびしょ濡れね」
薫がふと剣心を振り返ったとたん辺りが急に明るく光った。と同時に ドォォオン という音が鳴り響く。
「きゃっ!」という声と共に、薫は剣心の右腕に縋りついた。ビリビリと音の振動が、周りの家々を揺らす。
「・・・かみなり・・・・」
剣心の腕にぎゅっと顔を付けて、薫が頼りなさそうに小さく呟く。
「だいぶ近いでござるな」
軒下から僅かに見える空を見上げながら、剣心が呟く。自分の腕にしがみ付く薫は、よほど先ほどの雷に驚いたのだろう。恐々と眉を歪めていた。
そんな薫を見下ろしながら、剣心はふっと微笑むと、薫の耳元に囁いた。
「薫殿、雷が怖くなくなるおまじない、教えてあげようか?」
「え・・・?」と薫が剣心を見上げたと同時に、すかさず剣心が空いた左手で薫の肩を抱き寄せた。
辺りが一瞬稲光で明るくなる。同時に ドォォオン と雷鳴が鳴り響くが、今度は薫の叫び声は聞こえてこなかった。
あんなに勢いがあった雨音もだんだん静かになってきた。薄暗かった空も、わずかに光が差し込んで明るくなりつつある。
ゆっくり剣心が顔を離すと、薫がようやく自由になった唇から ほっ と息を吐いた。剣心の右腕に抱きついていた薫の身体は、いつの間にやら剣心の両腕にすっぽりと納まっていた。
「怖くなかったでござろう?」
剣心が悪戯な笑みをしながら得意そうに薫の顔を覗き込む。
「~~~~~~!!」
そんな剣心に薫は頬をぷっと膨らませながら、上目遣いで睨む。その頬は真っ赤に染まっていて。悔しそうだが、でもどこか嬉しそうな顔で。
________
あとがき。
雷が怖い薫ちゃんを使用したかった・・・。(だんだん小さくなる・・・・。笑)
相変わらずの文才の無さでお恥ずかしい
こう・・・・もっと町並みとか、雨の様子とかをうまく表現したいな~~~・・・・
でもこの雷の題材ってイイですよねえ、私だけ(笑)もっと違うバージョンで、Ver2とかで考えたいかも・・・(え)(笑)